近年ECサイトでの新しい販売手法として、動画を使って商品を説明する「ライブコマース」に注目が集まっています。ライブコマースとはちょうどテレビショッピングのネット版といったところで、今後ネット販売で主流になるのではないかと言われています。ライブコマースを使って事業を行っているinsky株式会社代表取締役社長の山中さんにお話をうかがいました。

今から６～７年前、専業主婦だった山中さんは、不要になった服や小物をフリマアプリで販売していました。家に居ながらスマホ一つで出来る手軽さや断捨離にも丁度良く楽しみながら続けていたのですが、出品物が思わぬ高値で売れることが続き、購買者の反応に面白さを感じ、起業に興味を持ち始めました。　世の中にはライブコマースが出始めていました。動画で商品の魅力を配信する新しいネット販売の手法に可能性を見出した山中さんはアパレルのネットショップを起業することにしました。20才から約３年間アパレル業界で働いた経験も後押ししました。

フリマアプリを利用していた頃は30代以上の購買者が多かったので、ネットショップもメインターゲットを30代半ばから上の世代に設定し、商品もトップス、インナー、ボトムス、帽子やバックまで幅広く取り扱うことにしました。ライブコマースでは、山中さん本人が服を着て商品を紹介する動画を撮影し、インスタグラムなどで配信します。スマホの画面上でお客様同士が「この間買った服のデザインが良かった」とか「肌触りが良く着心地が良かった」とういう風にチャットをする様子から、リアルタイムでの口コミが見られる点がこの販売方法の特徴です。　　女性の服だけでなく、男性の服の取扱いもしており、ご主人にモデルになってもらい、山中さんがサイズ感や着心地など質問する動画を配信しています。夫婦の掛け合いが面白く親しみが持てるという声が上がり、夫や息子に服を買いたいという女性客が増えました。　販売は順調で、始めて１年を過ぎた頃には売上が大きく伸び個人事業から法人化しました。さらに最近は、ライブコマースを行っている海外の会社との取引も始めています。オーダー制のバッグの販売で、すでに今回の取り扱い分は、予約の段階で完売してしまいました。　山中さんは、服と合わせて楽しんでいただくために、パワーストーンを使ったアクセサリーも販売しています。女性だけではなく、思いがけず男性からも評判が良く、今では服飾と並ぶ当店メインの商材になっています。しかし、パワーストーンはライブコマースには向いていない商材の典型だと言います。なぜなら、石は映像で見るのと実物を手に取って見るのとでは、色や大きさ、印象が違うことも多いため、実際に見てから決めたいとおっしゃるお客様が圧倒的に多いからです。また、石を見て「この石が良い」と直感で決めるお客様が多く、映像では魅力を伝えきれないのです。

現在山中さんは、高知蔦屋書店に月に一回ブース出店し、服やパワーストーン、パワーストーンを使ったアクセサリーを販売しています。ライブコマースを利用しているお客様からも「一度来てみたかった」と大変好評です。今後はパワーストーンの販売にもさらに力を入れたいと考えており、11月中旬よりフジグラン葛島店２階でスタートする実店舗で、服飾とパワーストーンを販売する予定です。ライブコマースとの相乗効果も生み出されるのではないかと期待しています。　山中さんが服を選ぶ基準は「自分が着て似合うもの」、石は「直観」で選んで仕入れるのだそうです。自分が着て似合っていなければ動画では映えません。どうしても自分基準の商品取扱いになってしまうのですが、お客様の支持の高さから「目利き」と「コミュニケーション能力が高い」のだと感じさせられます。実店舗では、自社で開発した高知県産のしょうがを使ったサプリメントも販売予定です。添加物を一切使用していない山中さんの自信作です。また、自分が以前から興味があったアンチエイジング特化型エステも併設したいそうです。どんなお店が出来上がるのか楽しみです。