お客様目線のサービスで 「美味しさと楽しさ」を体験できる 株式会社 鰹船
株式会社 鰹船炙った鰹はその場で切り分けてくれる
手間を惜しまず高知の味を提供する
株式会社 鰹船は昭和42年に、門田鰹節本店の土産物販売部門として誕生した。ご存知の方も多いと思うが、門田鰹節本店は大橋通りに店を構える創業130年の老舗である。
昭和40年台前半は歌手、ペギー葉山の「南国土佐を後にして」の大ヒットの影響から、高知県には県外から多くの観光客が訪れていた。設立の背景には、「わざわざ遠方からお越しいただいた県外の方々に、本場高知の、本当においしい鰹節を味わっていただきたい」との先代社長の思いがあった。
その後も大河ドラマの影響や、瀬戸大橋の開通が追い風となり、規模の拡大や飲食店の併設など、順調に業績を伸ばした。しかし、同業者も増え、競争が激しくなっていくなかで、効率重視に傾きつつある展開内容に疑問を抱くようになったとのこと。
そこで改めて、「本当に美味しいものを、手間を惜しまず提供する」という原点に立ち戻った。現在は団体旅行のブームも去って久しく、個人旅行が中心になりつつある。原点回帰は正しい判断であった。方向転換したのちは、「もう一度あのお店に行きたい」と思っていただける店を目指し、商品開発やサービスの向上に努め続けられている。
特注の串で炙る「藁焼き体験」
自分で焼ける!鰹の藁焼き体験!
メディアにも多く取り上げられたこともあり、県外観光客は「高知の食」に対する関心が高い。その筆頭は何と言っても鰹のタタキである。鰹船が他の店と一線を画するのは、お客様一人ひとりが鰹の藁焼きを体験できる点だ。
年間15 万人の観光客が訪れる鰹船では、藁焼き体験客は休日には100人を超え、多いときには800人に達す
る。近年では、外国人観光客も徐々に増えてきた。外国人は生魚を苦手とする方が多いが、藁焼きを体験したほとんどの方に美味しいと言っていただける。
複数の切り身をまとめて炙る「鉄きゅう」
藁焼きに隠されたこだわりの数々
藁焼き体験には外から見えにくい部分にこそ、鰹船のこだわりが存在する。
藁焼きでは一般的に、複数の切身をまとめて炙る、鉄きゅうという道具を使用する。しかし鰹船では、軽量化をはかった特注の串が使われている。串の軽さから、小さなお子様や女性でも容易に持つことができる上、切身を一つひとつ串に刺して焼くことで臨場感が高まる。また、藁もすべて、高知県産を使用している。国内では米栽培の機械化により、刈入れ時に藁をバラバラに解体してしまうことから国産藁は入手が難しい。しかし、安価で一般的な中国産の藁よりも国産品はしっかりとした匂いがあり、煙も少なく、より香ばしくなる。
鰹にもこだわりがある。藁焼きで使用される鰹は、嵐のときを除いて全て当日の朝、市場から仕入れた生の鰹を使っている。鰹は夏に仕入れるには安く、冬は驚くほど高騰するが、提供する値段は年中一切変えない。冬場に冷凍を使うこともしない。どうしても、天候の関係で、鰹が仕入れられなかった場合は、冷凍を使用していることをアナウンスするなど、お客様への気遣いも徹底されている。
大人気の「鰹タタキ定食」
高知県の人にも親しんでもらえる観光施設に
これまで鰹船では、主眼を県外観光客の方々に向けてきた。しかし最近では、「県外の方の口コミで、県内の方が来店する」という現象が起き始めた。足元をおろそかにしていたという反省も込め、魚の解体ショーや藁焼タタキの実演を通じた食育イベントなど、地元のお客様が親子で参加できるサービスの提供を始めた。イベントや販促を担当する浜田氏は現在、子育ての真最中であり、その経験がアイデアに多く生かされている。今後は、フードコーディネーターの大原一郎氏の協力のもと、新たに和スイーツ専門店を敷地内に展開するよう予定している。
大原氏は、あぐり窪川の肉まんや、満天の星のほうじ茶大福、霧の森大福などを手掛けた県内でも知名度の高い食のプロデューサーである。開店後は、母の日や敬老の日などに合わせ、親子でおはぎ作り体験を行うことなどを企画しているとのことだ。
浜田氏に今後の抱負をうかがうと、「新しいお店ができた際は、私たちは妥協せずに手間暇をかけ、お子さんに
も親御さんにも楽しい思い出を作るお手伝いができればと考えています。『もう一度あのお店に行きたいと思っていただける店になる』という意味で、昔から当社の方針はずっと同じなんです。」
賑わいの裏側に流れる、ひとすじの汗を垣間見た気がした。
会社情報
社名 | 株式会社 鰹船 |
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住所 | 高知市仁井田201-2 |
従業員数 | 計48名 男8 / 女40 (2017年12月時点) |
設立年月 | 1968年5月 |
企業HP | http://www.tataki.co.jp |