「土佐鴨」を「土佐赤牛」「土佐ジロー」 「土佐はちきん地鶏」に次ぐ食材に!
BGM高知 株式会社人との縁で始めた畑違いの「土佐鴨」飼育
「本当は、鴨の飼育をする予定はなかったんです。」
映像制作会社がなぜ食用鴨の飼育を手がけるようになったのか、その問いに対する若松会長の答えはとても予想外のものでした。
同社は平成5年から土佐ジローの飼育を開始しました。ご存知の通り土佐ジローとは、高知特産の地鶏で、肉・卵とも品質高い高知原産の天然記念物土佐小地鶏の雄と、産卵率の高いアメリカ原産のロードアイランドレッドの雌の一代雑種です。「中山間地の庭先農業」「高齢者の生きがい対策」として研究の末に開発され、昭和60年代から県内各地で飼育が始まりました。
当初は高知県畜産試験場で孵卵をしていましたが、諸事情でそれができなくなりました。その頃、土佐ジロー協会の会長をしていたことから、孵卵をなんとかしなければと奔走し、道後の工藤舎に無理を言って引き受けていただきました。実家も周囲の家も庭先で鶏を飼っており、子供が鶏の世話をするのが当たり前だった幼少時代の原体験から「鶏を飼うこと」をすんなり受け入れることができたそうです。
「子供の頃の環境でしょうが、畑違いの分野に飛び込むという感覚はなかったですね。」と、目を細める若松氏は、まるで昔を懐かしんでいるかのように見えました。
再び転機が訪れたのは、土佐ジローの飼育方法も確立しつつあった平成24年6月。以前、孵卵で大変お世話になった工藤舎の社長から「知人が困っているので、何とか助けて欲しい」と要請があったのが合鴨の飼育の打診でした。さすがに、本業ではない畜産事業をこれ以上拡大できないと一度は断ったものの、恩義のある社長から頼み込まれたこともあり、これも縁だと最終的に引き受けることを決意したそうです。「不思議なことに、人から新事業の話をされる事が多いんです。その方が困っていて、自分が動くことで何かお手伝いできるなら・・・と引き受けてしまうんですよね。」とは若松氏の談。そこには、困っている方をほっておけないという気骨が感じられ、それこそが、周りの方から頼られる理由なのだろうと思いました。
自社で素早く処理を行い、全国へお届けしている
こだわりから生まれた鴨肉を全国へ
BGM高知で飼育している合鴨はイギリス原産のチェリバレー種。北京ダックに使用される北京種をもとに改良され、日本では最も流通量の多い種類です。味が繊細で、特に脂は甘味を感じさせるほどの味わいがあることから、日本料理にも適した品種です。
若松氏がまずこだわったのが飼料です。鴨の飼育にトウモロコシ由来の遺伝子組換飼料を使用している会社が多いなか、同社ではタカキビという穀物を中心とした天然飼料を用いています。鴨肉は脂身の色が重要で、白いほど良いとされています。トウモロコシが主成分の飼料だと、脂身が黄色くなりますが、独自のタカキビ(一般的にはモロコシ、マイロ、コーリャンと呼ばれる)飼料を食べて育った鴨は、鴨肉の脂身が限りなく白色に近く、鴨独特の臭みも消え、プリプリとした食感になるとのことです。
次にこだわったのが、飼育環境です。太平洋に面した高知県芸西村で坪当たり10羽と広いスペースをとって飼育しています。土佐ジローもそうですが、広い場所で育てられるほど、ストレスもなく、運動量が多い為、弾力性のある良質な鴨肉となるそうです。
さらに、配送スピードと環境にもこだわりを持っています。自社に処理場があるため、全国各地に新鮮な鴨肉を生のままで配送が可能です。配送する直前まで真空パックにした各部位を「スラリーアイス」を使用し冷蔵しているため、鮮度が保たれた状態でお客様のもとまでお届けできるそうです。「スラリーアイス」とは、海水を含んだシャーベット状の氷のことで、通常の氷よりも商品全体を均一に冷やすことができます。主に漁業で使用されるそうですが、若松氏は、全国で初めて畜産業界で取り入れました。これにより、ロースやモモだけでなく、すぐに鮮度が落ちてしまうレバーやハツ、砂肝も生のままでの配送を可能としました。
現在は県内のホテルや居酒屋に少しずつ販路が開拓できつつあるものの、京都の老舗鴨問屋への納品が大半を占めています。いまや、売上1億円を超えるほどの大きな事業となりましたが、若松氏は、「土佐鴨」を「土佐赤牛」「土佐ジロー」「土佐はちきん地鶏」に次ぐ食材として、高知県の方々にもっと召し上がっていただくことを、次の目標に定め、精力的に活動しています。若松氏は地道に認知度を高めるため、ふるさと祭りや、室戸産業祭など県内各地のイベントに出店し、串焼きなどを提供しています。最近では鴨肉のハンバーグも開発しました。ジューシーな肉汁からは鴨肉特有の風味とほどよい甘さが広がります。
皆さんも出先のイベントで「土佐鴨」の文字を見かけられたら、ぜひ一度、お召し上がりください。
会社情報
社名 | BGM高知 株式会社 |
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住所 | 高知市北高見町281-2 |
従業員数 | 計25名 男21 / 女4 (2018年1月時点) |
設立年月 | 1971年4月 |
企業HP | http://www.bgmkochi.com |