病院や施設、個人宅を訪問し、シャンプーやカット、パーマなどの美容サービスを提供する「訪問美容」をご存知ですか。潜在的なニーズが高く、県外では少しずつ人気を集めています。「美容室に来ることが出来ないお客様に少しでも明るく元気になっていただきたい」という思いから、「訪問美容サービス　かいんど」を立ち上げた代表者の佐竹さんと、従業員の脇田さん、門田さんの３人にお話を伺いました。

30年後、１億２千万人の日本の人口は、８６００万人まで減少し、2.5人に１人が65歳以上、４人に１人が75歳以上の高齢者になると予測されています。なかでも高知県は全国より15年も早く高齢化が進んでいることから、今後、高齢者向けの医療や介護サービスの充実が求められます。　代表者の佐竹さんは事業を立ち上げる前は市内の自動車学校に勤務していました。若い入学者が年々少なくなる一方で、高齢者講習の受講者が増え続けている現実を目の当たりにして、いつしか「高齢者のために自分に出来ることはないか」と考えるようになりました。　そんな時、無店舗型の美容師をしていた幼馴染の脇田さんから、「訪問美容サービス事業を本格的に立ち上げないか」と持ち掛けがありました。脇田さんは日頃から訪問美容の潜在的ニーズを感じていました。若い頃に美容師をしていた佐竹さんは、この提案が「自分にできる何か」の答えであると直感し、事業の立ち上げを決心しました。美容師と介護士の資格を持つ門田さんが最後に加わって、平成30年４月に、「訪問美容サービス　かいんど( 以下　かいんど)」が立ち上がり、その３か月後には美容室KIND hair design（かいんど へあ でざいん）がオープンしました。

通常、訪問美容はカットが主なサービスですが、かいんどでは、カットの他に、パーマやカラーも行っています。また、少しでも美容室でサービスを受けている雰囲気を味わっていただくために、アロマオイルを炊いたり、音楽をかけるなど工夫をしています。さらに、利用者の方に安心して施術を受けていただけるよう、全員が介護職員初任者研修（旧ホームヘルパー２級）を修了しています。　出張先は、主に県内の病院、施設ですが、要望があれば個人宅にも訪問しています。　「高齢者の方や病気の方も、おしゃれをしたいという気持ちに変わりはありません。かいんどのサービスでも、特に女性のお客様にはカラーが人気です。私たちのサービスでお客様に元気になっていただければ嬉しいです」と門田さんは語ります。

定期予約の取りやすい訪問のお客様を優先して予約を埋め、空き時間に一般のお客様を入れることで、時間を効率的に使い、２つの収入源で経営の安定をはかる。この逆転の発想が、「美容室の経営に一石を投じるのではないか」と脇田さんは期待を高めています。また、若い美容師にも訪問美容という働き方を選択肢の一つとして考えて欲しいと思っています。

現在は、病院、施設、自宅を訪問し、高齢やケガ、障害のために美容室に来られないお客様に向けたサービスを行っています。今後は、外へ出かけたいけれど交通の便に困っている方や身体が動かないわけではないけれど送迎サービスがあることで外に出る機会が得られる方まで利用を広げたいと考えています。「送迎のＳ、サロン( 美容室) のＳ、出張のＳで、新しい美容室の形を作っていき、お客さんに喜んでもらいたいです。さらに、長年お越しいただいたお客様が来店できない状況になったときは、こちらから責任を持って面倒を見るという姿勢が高齢化社会を迎える中での美容師には必要です」佐竹さんの言葉に強い意思と決意を感じました。