映画を通じて 感動体験を届けたい
株式会社シネマ四国移動映写をご存じでしょうか。移動映写は公民館や体育館、野外にスクリーンや音響機材を設置し、映画を見るものです。今回は30年以上移動映写に携わってこられた、株式会社シネマ四国の田邊さんにお話を伺いました。
友人に誘われて
元々映画好きだった田邊さんは移動映写の会社に就職しました。当時は県内各地の小中学校で、人権学習や平和学習が行われており体育館などでの学習映画の上映が盛んでした。学習映画だけでなく、娯楽映画も上映してほしいと依頼されることも多く、多い年には年間200本以上の上映会を行っていました。映画上映会を通じてたくさんの人と笑いや感動を共有したり、地域の人たちと一緒に上映会の準備に汗を流したりする毎日に、田邊さんは大きなやりがいを感じていました。
映画業界の変化
しかし社会のデジタル化が進むにつれ、移動映写のニーズは後退を余儀なくされていきました。ビデオやDVD、Blu-rayといったレンタルの増加やネット配信の増加、シネコンなどの大型映画館の増加により徐々に小規模な映画館や移動映写を行う業者が減少していき、田邊さんが働いていた会社もついに廃業することになりました。ところが今まで地方で営業していた小規模な映画館が少なくなってしまったことから、郡部の方々は高知市まで出てこないと映画館に行けなくなりました。またいくら映画を家庭で鑑賞できるようになったとはいえ、映画の画質や音の良さ、スクリーンで見る迫力など映画館で味わえる感動は無くなったわけではありません。何より地域の方々と一体になって作り上げていく移動映写独自の魅力に大きな可能性を感じていた田邊さんは、所属していた会社から機材をすべて買い取り、2013年に自ら会社を立ち上げました。田邊さんは創業後すぐに積極的に県内各地で営業しました。上映するにあたり親子で楽しめる作品や、人と人のつながりをテーマにした作品、高齢者向けの作品など、地域の方々の共感を呼び、地域の活動につながりやすい映画を探し、提案し続けたそうです。その努力が実り、2019年には年間100本を超える上映を行うまでになっていました。
体育館での上映の様子
コロナ禍でも地域を元気に
順調に上映数は増加していましたが、昨年はコロナ禍のため3月以降の上映をすべて中止せざるを得ませんでした。しかし、お客様からはコロナ禍でもなんとか上映会を開催する手立てはないかという問い合わせを頻繁にいただきました。そこで田邊さんは非接触で移動映写を楽しんでいただける方法としてドライブインシアターを企画しました。これは大きなスクリーンを野外に設置し、音声は車のFMラジオから流す方法です。問い合わせをいただいたお客様に提案するとともに、フェイスブックで開催地を募ったところすぐに県内の複数市町村からオファーがあり、令和2年7月から土日を中心に上映会を開いています。現在は県外からのオファーも増えているなど田邊さんは手応えを感じています。「野外の上映会ではお祭りのような賑やかさがあり、久しぶりのイベントで元気が出たというお言葉をたくさんの方から頂戴しました。特に郡部には映画館の無い地域もたくさんあり、親子やお年寄りの方々が楽しめる娯楽が少ないです。ただ映画を上映するだけではなく、お祭りのようなイベントとして上映会を楽しむ方もたくさんいらっしゃることを改めて知りました。地域の方々にたくさん参加していただける上映会を行っていくことで、コロナ禍でふさぎがちな気分を明るくし、地域振興に貢献したいです。」 田邊さんの挑戦に大きな期待がふくらみます。
映画館さながらの機械を扱います
ドライブインシアターによる上映会
会社情報
社名 | 株式会社シネマ四国 |
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住所 | 高知県高知市北本町三丁目10 番28-8 号 |
企業HP | URL:http://cinema-shikoku.com |